第4話 奥行きのある物語性を持たせたい。

菅野 こっちのは、ナイキだったっけ?
鈴野 そうです。ナイキのAIR FRCE1(AF1)というシューズが、発売から25周年を迎えて、その記念に1年間限定で「NIKE 1 LOVE」というショップがオープンしたんです。僕らはその内装設計を担当しました。
菅野 限定なんだ。
鈴野 そうなんです。インテリアは、AF1の靴底に25年間刻まれ続けている「同心円」をモチーフにしています。大好きなAF1に囲まれる空間をつくりたくて、中央に大きなガラスケースをつくりました。でもこれが大変で。(苦笑)
菅野 うん、大変そう。(笑)
鈴野 インテリアのモチーフからすると、ガラスケースも円形にしたかったんですけど、湾曲したガラス面に、靴をのせるガラスを接着していくのって、かなり高度な技術なんです。
菅野 そうだよね。
禿 大変でした。
菅野 それ、どうしたの?
鈴野 運命的に、すごく腕のいい職人さんに出会えたんです。
菅野 すごいね!(笑)
鈴野 その人のおかげで、円形が実現しました。
菅野 まさに職人とのコラボレーションだね。
鈴野 プロジェクトを進めるときは、核となるコンセプトがある一方で、それだけじゃない奥行きのある物語性を持たせたいと思ってるんです。
菅野 うんうん。
鈴野 ナイキの場合、実は初期段階から、水槽の中を泳ぐ魚というイメージを持ってたんです。白いAF1が300足近く並ぶ様子が、魚に見えるかんじ。
菅野 なるほど、おもしろいね。
鈴野 なので、白いAF1の群れに1足だけ黒いAF1が入った写真を見て、小学生の女の子が「スイミーみたい!」と言ってくれたのは嬉しかったですね。
禿 商品をそのままかっこよく見せるんじゃなくて、別の価値観を提示することで、商品をより豊かなものになる。その辺は常に意識してます。
菅野 なるほどね。
第1話 事務所を立ち上げる予定はなかった。
第2話 建築もインテリアも、同じように周囲の環境から影響を受ける。
第3話 サンプルをつくって実験してみる。
第4話 奥行きのある物語性を持たせたい。
第5話 一番大変だったのは、型枠職人です。
第6話 脳ミソが楽しんでるかんじ。
第7話 この年代は優秀な人が多い。