第5話 一番大変だったのは、型枠職人です。
菅野 |
これは、すごく個性的な形をしているけど、家なの?(笑) |
鈴野 |
家です。(笑) あの、決して個性的な外観を狙ったわけじゃないんですよ。 |
菅野 |
うん。 |
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鈴野 |
施主からは、内装と外装が同時に出来上がるようなものっていう要求があったのと、周囲の環境が大きく影響して、こうなったんです。 |
菅野 |
なるほど。 |
鈴野 |
敷地が、隣接する建物と斜面に囲まれているので、壁面からの日照は見込めなかったんです。しかも平屋なので1階の天井にトップライトをとっても、隣家から見下ろされるような感覚になってしまう。 |
菅野 |
うんうん。 |
鈴野 |
そこで、光を求めてニョキニョキ伸びていった結果、このフジツボみたいな形になりました。 |
禿 |
確認申請のとき、「軒の高さが6mもあるのに、平屋なわけがないでしょ?」って言われましたね。(笑) |
菅野 |
そうだよね。(笑) |
禿 |
でも、このプロジェクトで一番大変だったのは、型枠職人ですね。 |
鈴野 |
よほど変ったものを手がけている職人でないと、絶対にできない形状なんです。 |
菅野 |
これはモメたでしょう?(笑) |
禿 |
モメましたね。(苦笑) |
鈴野 |
試行錯誤した結果、事前に工場でパソコンで打ち出した形状に加工してもらって、それを現場で組んでもらいました。 |
菅野 |
大変だ。 |
鈴野 |
現場で職人さんに、「大変ですか?」って声を掛けたら、「大変に決まってるだろ!」って。(笑) そりゃそうですよね。 |
菅野 |
あはは(笑) |
禿 |
構造計算なんかは、パソコンがどんどん進化していて、以前は不可能だった複雑な形状が可能になったんですけど、型枠職人の方法は変わっていないんですよね。 |
鈴野 |
これも、職人の技術があってこそできた形状です。 |
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菅野 |
でもさ、その年齢でこれだけ新しいことを実現させるってことは、大変な苦労があると思うんだよ。新しいことに抵抗を示す人もいるでしょう? |
鈴野 |
そうですね。 |
禿 |
難しいことを実現させるときは、施工業者さんと一緒に考えて進めるようにしてます。 |
菅野 |
なるほど。 |
禿 |
重要なところは特にしつこく、何度もやりとりを繰り返して。説得するというよりは、模型を使ったり、イメージを伝えるやりとりの中から、一緒に作り上げるというかんじですね。そうするとだんだん向こうもやる気になってくれる。 |
菅野 |
しつこさですか。(笑) 2人の場合「ゆるやかにしつこく」といったかんじかな。2人の人柄もあるんだろうね。 |
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