第6話 もっと近づきたい。

これからどんなことをやってみたいですか?
磯野 生活の隅みたいなものを掘り起こしていきたいですね。便利だけどダメみたいなモノって、けっこう多いじゃないですか。便利だけど、これを置いたら部屋が台無し! みたいなモノ。
菅野 うん。多い。
磯野 例えば、日常的に工夫しているようなことが、デザインによって昇華していくようなカタチで、家の中にステキなモノが増えたらいいなって思います。
菅野 そうだね。
磯野 私、最近すごくショックだったことがあって。近所の奥様方が、よく家に遊びに来てくれるんですけど、みんなうちのモノを見ながら、「おもしろーい!」って言うんです。興味は持ってくれるんだけど、自分の生活に取り入れようっていうかんじは全然しないんです。
菅野 あぁ、なるほど。
磯野 私は一生懸命考えているし、いいと思っているんだけど、普通の人はこんな感じなんだぁっていうのが、ちょっとショックで。
菅野 距離があるんだ。
磯野 そのときに、変なデザインのモノがなくなっちゃえば、みんなもちゃんとしたデザインのものを使うじゃん! って思ったんです。(笑)
菅野 なるほどね。(笑)
磯野 だから、もっと生活に密着したもので、私の周りにいる人たちが「欲しい!」って言ってくれるようなものをやりたいなと思ってます。
菅野 いいですね。
磯野 だって、ミキモトのキーホルダーを作ったときなんて、私としては良いと思って見せたら、「なぁんだ、重いねぇ!」とか言われちゃって。(笑) どんどん突っ込まれちゃった。
菅野 それが現実だからね。(苦笑)
磯野 万人に好まれるデザインとかじゃなくて、デザインされたモノを、もうちょっといいなと思ってもらいたくて。「私たちとは違う。」とかって思われたくない。もっと近づきたいんです。
菅野 うん。
磯野 一時期、工業製品から離れた時期もあったんですけど、そういう意味で最近は、工業製品がもうちょっといいモノになればいいなと思っているので、積極的にやりたいなと。私のできる範囲で。スカしたモノではなくてね。
菅野 うん。
磯野 最近、デザインっぽくないって言われるんですけどね。(笑)
第1話 「これどうやってつくったと思います?」
第2話 コド・モノ・コト
第3話 お母さんがつくってくれたような温かさ。
第4話 企業にお勤めするのは、絶対にいいこと。
第5話 デザイナーは、絵を描くのが仕事じゃない。
第6話 もっと近づきたい。
第7話 普通のモノをつくるのは、けっこう勇気がいる。