磯野梨影 磯野 梨影(プロダクトデザイナー)
1987年 武蔵野美術大学卒業後、ソニーデザインセンター PSD associates(英)を経て、2000年よりPear Design Studioとして活動。一児の母。くらしに心地良いモノづくりを心がけてデザインにとりくむ毎日。

Pear Design Studio www.pear-ds.com

第1話 「これどうやってつくったと思います?」

菅野 今日はよろしくお願いします。
磯野 こちらこそ、お手柔らかにお願いします。
お二人が知り合ったのは、いつ頃なんですか?
菅野 3年前に、ミキモトインターナショナルという会社から、日本の伝統的な素材を使ったプロダクトを発信したいという相談を頂いて、萩原修さんにプロデュースをお願いして、素(もと)プロジェクトというのをやったんです。磯野さんとは修さんからの紹介で、そのとき初めてお会いしました。
磯野 そうでした。素プロジェクトは、12人のデザイナーが6つの素材を使って商品をつくるもので、Vol.1で私はセラミックを担当しました。
菅野 プロジェクトのテーマは「リビングの真珠」でしたよね。
磯野 そうそう。セラミックなら、真珠のまるっとした、艶っとしたイメージができると思って、こう、まるまるしたものをつくりました。
菅野 あの、いきなりアレだけど、これは売れたよね。(笑) ミキモトらしさを非常にうまく表現していると思う。
磯野 ありがとうございます。(笑)
菅野 素材はセラミックだけど、ジュエリーっぽい。これは素晴らしいなと思って、vol.2にも参加してもらったんですよね。
磯野 vol.2はガラス係でしたね。
菅野 これは苦労したよね!(笑)
磯野 大変でしたね。ガラスをやりましょうということになったんだけど、メーカーが決まっていない状態で。(笑)
菅野 そうそう。(笑)
磯野 私の中では、やりたいことは決まっていたんです。でも、どうつくったらいいか、わからなかったんです。
菅野 最初、どうしたんだっけ?
磯野 まず、富山のガラス工房で、試作を作ってもらいました。とりあえず、スケッチに描いていることが実現することを確認して、そこからメーカーを探すかたちで。
菅野 いや、大変でしたね。
磯野 これは色ガラスを使ってるんですけど、日本で常時色ガラスを使えるメーカーって少ないんですよね。
菅野 そうかぁ。
磯野 たまたまライフスタイルショーで色ガラスを出品してた上越クリスタルを見かけて、早速試作を持って行ったんです。絵だけだったら断られたかもしれないけど、モノがあったので。
菅野 でも、いきなりやってくれないでしょ?
磯野 担当の方に「これどうやってつくったと思います?」とか言って、ちょっとけしかけたりしました。(笑) それでようやく商品になったんです。
菅野 磯野さんのデザインの中で、色って非常に大切な要素だと思うんですよ。すごく微妙な色出しを、何度も何度もやりますよね。
磯野 しつこいですね。(笑)
菅野 それで最終的には非常にやわらかい色を出してくるんですよね。
磯野 好きなんですよね、色が。
菅野 磯野さんには、ミキモト以来、僕のプロジェクトにはほとんど参加してもらってますね。
磯野 最近、気がつくと菅野さんのいるところ全部参加。(笑) ミキモトは特に楽しいプロジェクトでしたよね。あそこで初めて会ったデザイナー同士が仲良くなって。すごく楽しかったです。
第1話 「これどうやってつくったと思います?」
第2話 コド・モノ・コト
第3話 お母さんがつくってくれたような温かさ。
第4話 企業にお勤めするのは、絶対にいいこと。
第5話 デザイナーは、絵を描くのが仕事じゃない。
第6話 もっと近づきたい。
第7話 普通のモノをつくるのは、けっこう勇気がいる。