菅野 |
ミキモトの素(もと)プロジェクトでおもしろかったのは、集まったデザイナー達が、お互いのデザインを批判というか意見しはじめて。(笑) |
萩原 |
見方は複眼的になった方がいいので、あれはよかったですよね。でも最終的に決定するのは1人なんです。 |
菅野 |
これが非常におもしろかった。全然遠慮なし! |
萩原 |
そうそう。遠慮なしでしたよね。(笑) けちょんけちょんに言われてましたよね、山田さん。(笑) |
山田 |
楽しかったよー!(笑) |
萩原 |
みんなから言われて。(笑) |
菅野 |
これがやっぱり集まる意味かなぁって。 |
萩原 |
でも、あんな状況になるプロジェクトって、あんまりないんじゃないかな。(笑) |
菅野 |
やっぱり遠慮しちゃってるプロジェクトは多いですよね。 |
萩原 |
オゾンの最初の頃は、テーマをつくって、それをデザイナーにお願いしたら、展覧会の日まで何が出てくるかわからないっていう企画を何回かやったんですよ。でも、これはやっぱりどう考えてもなんか違うなと思って、途中段階で何回か集まるようになったんですよね。1対1じゃなくて、みんなで集まって、どんなものをつくるのかって、けん制し合いながらも良いところと悪いところを言い合ったり、あるいは実際につくる現場を見せ合って情報交換したり。何回かやってると、僕もそういうノウハウがついてきて、そうするとみんなが良くなっていったんです。 |
菅野 |
なるほど。 |
萩原 |
1人が得られる情報って少ないので、それをみんなで共有できて、さらに違う視点で意見を言い合うっていうのは、オゾン時代に独自に開発したノウハウですね。誰もそういうこと教えてくれないんですけど、あ、こういう風にやればいいんだっていうのがだんだんわかってきて。それができるようになってきて、展覧会の質も、できてくるものもだいぶ変わりましたね。 |
菅野 |
そうですか。 |
萩原 |
なんかね、同じこと言っても勘違いする人ってけっこういるんですよ。デザイナーって、あんまり人の話聞いていないので。(笑) 放っておくととんでもないことになっちゃうし。 |
菅野 |
でもやっぱり、プロジェクトごとに試みっていうのはあるわけですよね。 |
萩原 |
そうですね。 |
菅野 |
今僕が試みてるのは、人選をアダルトチームにしたプロジェクト。(笑) |
萩原 |
なんですか、アダルトって? 年齢上ってことですか?(笑) |
菅野 |
そう。年齢かなり上の、僕と同年代の人達を集めてみたんですよ。そういえばそういう機会ってあんまりないなぁと思って。 |
萩原 |
確かに。ないかも。 |
菅野 |
この年代の人たちが集まったら、どんなことになるんだろうって思ってやってみたんだけど、最終結果はけっこうおもしろいものになったんですよ。なにしろ、やっぱり頭は若いっていうことがよくわかった。まだまだいけるぜっていうね。(笑) |
萩原 |
いけるぜって。(笑) |
菅野 |
ただね、この年代になると、家庭を持ってたり、子供がいたりするから、独身のデザイナーとはちょっと違う、ホッとする感っていうのかな、そういうのが垣間見れる仕上がりでしたね。 |
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プロダクトデザイナーとしての菅野さんからみた萩原さんの存在って、どんなものですか? |
菅野 |
やっぱり大きいですよ。我々1人のデザイナーっていうのは、ある意味で職種の幅を自分で狭めているところがあって、例えばデザイナーだから営業に行ったら恥ずかしいとかね。デザイナーは、場を与えてもらうことほど嬉しいことはないんですよ。デザインっていう大きい括りの中で、そういう場をつくる人がもっといっぱい増えてもらいたいなって思ってるんですよね。 |
萩原 |
なるほどね。 |
菅野 |
デザイナー10人を集めて、俺が営業をやるからっていうカタチで手を上げて、10社のデザイナーの営業マンになるとかね、そういう新しいデザインの枠組みが、もっともっと生まれてきてほしいなって思ってます。 |
萩原 |
うんうん。 |
菅野 |
その手段の一つとして、萩原修さんはそういうことをやってくれていると。 |
萩原 |
広い意味では営業ですよね。 |
菅野 |
そうそう。広い意味での営業をやってくれてる。これがデザイン産業が活性化していくためには、絶対に必要な手段だと思うなぁ。デザイナーが100人集まっても、ビジネスとしてはなかなか成立しないんですよ。そういう意味では、プロダクトデザイナーとしては、もっともっと色んな考えの人と、いろんな職種、デザインという行為だけじゃないデザインの職種ってものを、日本はもっとつくるべきだなぁっていうのが今、頭の中にあることですね。 |