萩原修 萩原 修(デザインディレクター)
1961年 東京生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。大日本印刷を経て、93年よりリビングデザインセンターOZONEで、住宅、家具、日用品など生活デザインの展覧会を300本以上担当。04年に独立し、書籍、日用品、店舗、展覧会、コンペなどの企画、プロデュースを手掛ける。また、「コド・モノ・コト」「中央線デザイン倶楽部」「かみの工作所」「カンケイデザイン研究所」など、独自の活動を推進している。スミレアオイハウス住人。著書には「デザインスタンス」「オリジンズ」「コドモのどうぐばこ」「9坪の家」など。05年には、実家の後を継ぎ、「つくし文具店」店主になる。

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第1話 夢追い人とロマンチスト。

菅野 今日はでかい話でいきましょう。
萩原 あ、そうなんだ。僕、小さいことしかやってないからなぁ。
菅野 そんなことないでしょう。(笑)
萩原 ほんとですよ。空間は9坪まで。小さいのがなんか好きです。大きい話はできないかもしれない。
お二人の出会いはいつ頃ですか?
萩原 15年くらい前ですかね。
菅野 そうですね。初めて会ったのは富山。富山プロダクトデザインコンペティションで僕がテープディスペンサーを提案したときに、実は2人で酒飲んでるんですよ。バーのカウンターで。
萩原 バーのカウンターで?(笑) どこの? 富山の?
菅野 高岡の。
萩原 あ、ほんとに? 全然覚えてないや。すみません。(笑)
菅野 それをきっかけに、スーパーフック展、スーパースイッチ展、東京ワークハンズとご一緒させてもらって。
萩原 あぁ、そうでしたね。以前働いていたリビングデザインセンター・オゾンという施設で、僕が企画した展覧会に何度か参加してもらったんです。
菅野 その後、株式会社ミキモトの素(もと)プロジェクトをご一緒して。
萩原 そうですね。あれは僕が会社辞めた後でしたね。あれ、なんで僕に声かけたんですか? 勘違い?
菅野 いや違いますよ!(笑) 素プロジェクトが7年くらいたってたのかな。大きい企画になってきたときに、やはりプロデュースっていう存在が必要になってきて。それでお声をかけさせてもらったんです。
萩原 僕、それまで商品開発はやったことなかったんですよ。展覧会の企画で、デザイナーにつくってもらったモノを展示はしているんですけど、それは商品ではないので、そのへんちょっと勘違いをされていたのかなと。きっと菅野さんは、僕が商品開発のプロデュースができると勝手に思っていらした。(笑)
菅野 そうでしたか。(笑)
萩原 ただ、僕はそういう仕事をやりたいなと思っていたので、渡りに船でしたね。テーマもすごく面白かったし。ミキモトというのは日本のブランドだし、担当の方がとても意識の高い方でね、僕も俄然やる気になりまして。
菅野 3年間くらいですよね。
萩原 そうですね。山田さんにも参加してもらって。実は今日も来てもらっちゃいました。
そうなんです。来てくださいました。デザイナーの山田 佳一朗さんです。
山田 勘違いで声かけられたプロデューサーと、その人に声かけられたデザイナーです。
菅野 それも勘違い?(笑)
山田 たぶん勘違いです。(笑)
萩原 そんなことないですよ。(笑)
菅野 まあそんなもんだよね。それが出会いですね。あとは呑んで、しょっちゅうカラオケ行って。(笑)
萩原 (笑) でも、たぶんそういうのが大事なんだと思うんです。僕、オゾンで色んな展覧会の企画をやらせてもらいましたけど、あれは実はビジネスに直結している訳ではないので、デザイナー本人が自主的に参加してくれないと成り立たないんですよ。
菅野 そうですよね。
萩原 表現したい発表したいデザイナーがいて、僕はそのための場をつくる。お金払ってやってもらってる仕事ではないので、デザイナーとの関係は、仕事としての付き合いっていうよりも、個人的な付き合いになっていくんですよね。だから個人を知ってからデザインを依頼する、というか参加してもらう。そういう流れですね。それは今も同じです。
菅野 そんなかんじで15年、色んなことをやりましたね。
萩原 うん。微妙な関係ですね。
菅野 微妙な関係だよね。ほんとに。
萩原 がっぷり一緒にやってるわけでもないし、かといってオープニングに顔合わせるだけというのとも違ってて。
あの、お互いの魅力を聞いてもいいですか。
萩原 えぇっ!
菅野 恥ずかしいなぁ!(笑)
萩原 もじもじしちゃうね。(笑)
菅野 えっと、まぁ、デザインっていう大きい視野でみると、ある意味で全く真反対なのかもしれないなぁ。ミキモトの話も、僕は修さんが商品開発をやられていないことを知らなかったわけではなくて、逆にそれが面白いなぁと思ってね。
萩原 あ、そうだったんだ。
菅野 僕自身は、企業と商品開発をガツッとやるタイプなので、コスト面とかの落としどころを自然に考えちゃうんだけど、修さんは全く考えない。テーマにしても、売れる売れないっていうことをあまり気にしていないテーマが出てくるんだよね。それがまた面白い。夢追い人なんだよ、きっと。
山田 そう言う菅野さんはロマンチストじゃないですか。(笑)
萩原 夢追い人とロマンチストって。それ言い方が違うだけじゃないですか。(笑)
菅野 ほんとだ。(笑) なんというか、方向的には似てるんだけども、手法的に違うっていうのかな。
萩原 プロデュースっていうことに関してですよね。
菅野 この頃プロデュースみたいなことをやらせてもらってるんだけど、やっぱり修さんのことを意識してる部分ってあるんですよね。つまり、修さんと違うことやりたいなっていう意識がどこかにある。リアルにしたいっていうか。だって俺が修さんの後追いかけても意味ないし。そういう意味でとても勉強になってます。
萩原 僕、商品開発に関しては、菅野さんに声を掛けてもらったのが初めてだったんです。過去に実績があるわけでもないので、すごくありがたかったし、結構おもしろいことをさせてもらいました。
菅野 おもしろかったですね。
萩原 それからね、仕事でデザインをしている現場っていうのは、今まであまり見ていなかったので、「あ、こうやって仕事しているんだ」っていうのが見れて、けっこうおもしろかったなぁ。デザインのやり方ってデザイナーによってまったく違うんですよ。だから菅野さんはこういう風にしているんだっていうのがわかったしね。更にプロデュース的な仕事も試みようとしている。
菅野 試みて失敗してる。(笑)
萩原 いやいや。失敗かどうかはわからないんだけど。(笑) なので、感謝もしているし、デザインっていう意味ではすごく勉強させてもらっているという感じですね。あとカラオケも。(笑)
菅野 カラオケは俺の方がうまいかな。(笑)
第1話 夢追い人とロマンチスト。
第2話 修さんの企画は、ビジネスの匂いがしない。
第3話 色んな人が集まっている状況をつくりたい。
第4話 デザイナーは、何をやる仕事なのか。
第5話 広い意味では営業です。
第6話 2010年だい問題。
第7話 パリにデザインはない。
第8話 自分の中心が世界だと思ってる。
第9話 異質なものを組み合わせる調和の精神。
第10話 優秀な若者は田舎に帰ればいい。