第2話 盲蛇に怖じず。

菅野 マイさんは、あれだよね。気負うことなく自分の世界を表現できる方ですね。そうでしょ?
ミヤケ すいません。なんかそれ、ちょっと微妙に責められているような。(笑)
菅野 いやいや。(笑) 実は、プロダクトデザイナー同士って、けっこうライバル心があるのよ。デザインの切り口だとかそういうところを、意識し合いながらやってるんだよね。だからプレゼンも、みんながどういうプレゼンで責めてくるだろうっていうことを予測しながら、人にはないプレゼンの仕方を考えたりしてね。
ミヤケ ふぅん。
菅野 もしかしたら、作品ができる前、商品ができる前のプレゼンが、一番マジかもしれない。
ミヤケ みなさんけっこうテンション高めですよね。
菅野 高い。
ミヤケ 仲間内とはいえ。
菅野 そう。
ミヤケ なんか、ますます、すいません。(笑)
菅野 いやいや。(笑) 僕は最後、あんまりデザインしなくなっちゃったもんね。
ミヤケ そうでしたね。
菅野 やっぱりね、自分の企画の中で、ものづくりをやったらいけないなって思ったんだよね。客観的に見れなってくなるから。やっぱり自分の作品が1番かわいくなっちゃうのよ。
ミヤケ うんうん。
菅野 ちょっと引いた目でまとめるのもいいことだろうなと思って、後半はデザインしないようにしたんだけども、やっぱりね、出さないと寂しいね。
ミヤケ そりゃそうですよね。
菅野 火の道具展は、一切デザインしなかったんだよね。でも、発表の日を迎えたときに、なんかつまんないなぁっていう。(笑)
ミヤケ あぁ。
菅野 その企画がつまんないんじゃなくて、自分のものがないっていう、つまらなさというか、寂しさがあったなぁ。
ミヤケ そりゃありますよね。
菅野 だから今度はやろうかなぁ。
ミヤケ うん。やっぱり出ていただいた方がいいですよ。
菅野 うん。
ミヤケ 私の場合、プロダクトは本当に門外漢なので、「盲蛇に怖じず」みたいなかんじなんです。やろうと思ってもできないので、できないの大前提ですけど? みたいなかんじ。
菅野 そんなことないでしょう。
ミヤケ いえ、そういう意味では気楽なところもあるんですけどね。
菅野 うんうん。
ミヤケ だけど肩身は狭く思っているんですよ。こんな私でよろしいんでしょうか? って。ミソッカスなかんじですね。そういうかんじですよね?
菅野 いやいや、そんなことない。1番のメインですよ。
ミヤケ いや、違いますよ! 明らかにミソッカスなんです。でも、それが楽しいってところもあって。
菅野 うん。
ミヤケ 作家同士でも、グループ展をやるときのプレゼンなんかは、緊張度が高くなる人が多いです。
菅野 そうなんだ。
ミヤケ 同業者が集まると、そういう優劣みたいなのがあるみたいで、バチバチってなるらしいんですけど、私は同業でも、全然気にしてないところがあるので、たぶんそれは門外漢だっていう事プラスアルファ、もともと私あんまり。
菅野 ないよね!(笑)
ミヤケ 負けん気が全くないんですよ、ちっちゃい頃から。(笑)
菅野 あはは。(笑)
ミヤケ 全然気にならないです。むしろ、自分よりいい人を見ると、
「ほぉー! パチパチ! くっついて行きたい!」
くらいなかんじです。
菅野 うんうん。(笑)
ミヤケ 「素晴らしい! 何か教えて欲しい!」
ぐらいなかんじで、全然そういうのないんです。
菅野 うん。そういうところありますよね。
ミヤケ ちょっと、ネジが一本足りないんです。
菅野 いや、それは自分の世界観をしっかり持ってるからですよ。
ミヤケ いやー!
菅野 いや、ほんとに。
ミヤケ うーん、微妙ですね。ちっちゃい頃の駆けっことかも、1番でもビリでもリアクションが全く一緒だったんですって、私。
菅野 ほんとに?(笑)
ミヤケ 親がすごい心配して、一生懸命そういうの叩き込もうとしてましたね。
「ちょっとは恥ずかしくないの? ビリよ?」
みたいなかんじなんだけど、全然OKみたいな。(笑)
第1話 プロダクトデザイナーって真面目ですね。
第2話 盲蛇に怖じず。
第3話 画廊さんが牧羊犬で、私たちは羊。
第4話 空中分解するんじゃないかと思った。
第5話 現物で指示するパターン。
第6話 自分が欲しいものをつくってる。
第7話 私、サバティカルで。
第8話 悪くてもドロー。
第9話 センスがない人は、お金があっても意味がない。
第10話 お前だって日本語しゃべれないだろう。
第11話 売れないって言われてるメディアムで勝負してやる。
第12話 みんなそういう要素があるのかもしれない。