菅野 |
江戸意匠をやったときに、マイさんから言われたことがあって、それがすごく印象的だったんだけど。 |
ミヤケ |
はい。 |
菅野 |
我々プロダクトデザイナーって、誰に買ってもらったっていうところにあまり意識がないんだよね。どちらかというと、何個売れたかっていうところを気にしてる。一方でマイさんは、誰が買ってくれたかっていうことを気にしてるよね。 |
ミヤケ |
どんな人がとかね。 |
菅野 |
そこをすごい追求してて、ちょっと驚いたよね。 |
ミヤケ |
知れるんだったら知りたいですよね。 |
菅野 |
しかも、そのフォローまでちゃんとやってるよね。次の展覧会のときにお知らせしたり。 |
ミヤケ |
あ、それは、「次の展示があったら呼んでください。」って言ってくださった場合だけですよ。そういう方にはみんな送りますけど。 |
菅野 |
偉いなぁ。僕なんて、すぐ何個売れたとか考えちゃうんだよな。100個つくって60個売れた。よし、成功! みたい。やっぱり数が基本になってるのかなぁ。 |
ミヤケ |
っていうか私、そんなにつくれないですからね。(笑) ほんと覚えられるくらいですから。 |
菅野 |
でもあのとき、その辺を改めていかなきゃいけないなぁって思ったりもしたよ。 |
ミヤケ |
自分のいないところで売れたものはわからないですけど、私とかマネージャーがいて、話しかけてくれる人っているじゃないですか。 |
菅野 |
うん。いるいる。 |
ミヤケ |
「次も絶対呼んでください。」とか、「他にどんなのがあるんですか?」って言ってくれたり。そしたらやっぱり嬉しいので、連絡先を書いてくださればお知らせしますって。だけど、数が多いとできないですよね。何百個、何千個の単位になるとちょっと。 |
菅野 |
ただねぇ、言いたくないんだけど、デザイナーで人間国宝になった人っていないでしょう。 |
ミヤケ |
いないんですか? |
菅野 |
いない。 |
ミヤケ |
えぇー! それはおかしいですよ。 |
菅野 |
デザイナーの社会的地位っていうのがね、やっぱりまだまだなんだよなぁ。 |
ミヤケ |
そうなんだ。 |
菅野 |
やっぱりその辺で、アーティストとデザイナーの違いというか、日本が見出す価値の違いが見て取れるよね。 |
ミヤケ |
うん。そういうのはね、本当によくないです。だって、基本的にはアーティストでもデザイナー的な人もいるし、デザイナーでもアーティスト的な人もいるし、微妙じゃないですか。 |
菅野 |
うん。 |
ミヤケ |
それって、さっきのメディアムでジャンルを分けるのと一緒です。ほんとうに悲しいです。 |
菅野 |
そうなんだよ。 |
ミヤケ |
私とかが、企業の人からお仕事もらったりすると、社長さんに会うじゃないですか。アートから一番遠いって言われてる実業家の人でも、どう考えてもアーティストっぽい人っていっぱいいるんですよ。 |
菅野 |
うんうん。 |
ミヤケ |
まずビジョンがあって、その絵を具現化して、見える、触れる、もしくは動くようにするためには、手段を選ばないみたいな気迫をお持ちなんですよね。 |
菅野 |
たしかに。 |
ミヤケ |
それって、アーティストが持っていなきゃいけない要素じゃないですか。自分が見たいとか、自分がつくりたいって思ったモノのために命を懸けるみたいな。あと職人さんとかもそうですよね。寝る暇を惜しんで、自分のパンをつくるとか。それってすごくアーティストっぽいなと思うんです。 |
菅野 |
そうだよね。 |
ミヤケ |
だから一概には言えないし、それはモノをつくる人はみんな理解してると思うんですよ。プロダクトの人も職人さんも、企業の人もそうなのかもしれない。もしかしたら、みんなそういう要素があるのかもしれない。ただ便宜上、職業名がついているっていうだけですよ。それはなんか残念です。誤解されてる! |
菅野 |
うん。まだまだ話せるな。今日はおもしろいね。 |
ミヤケ |
ありがとうございます。 |
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ひとまずこの辺りでお開きとさせてください。今日はありがとうございました。 |