菅野 |
海外に暮らしてみて、私はやっぱり日本人だなって思ったことってありますか? |
ミヤケ |
うーん。常にずっと日本人ですけどね。(笑) |
菅野 |
うん。(笑) |
ミヤケ |
私、もともと西洋文明に対する憧れがあまりないんです。 |
菅野 |
あぁ。 |
ミヤケ |
パリは、一言もフランス語しゃべれないで行っちゃったんですけど、そういうことに対してあまりビクビクしないんですよね。「当たり前じゃん! あたし日本人なんだし。」みたいな。(笑) |
菅野 |
あはは。(笑) |
ミヤケ |
「お前だって日本語しゃべれないだろう。」みたいなかんじですね。 |
菅野 |
フランス人だって英語絶対話さないしね。 |
ミヤケ |
うん。だからフランス人も、「まぁ僕だって、日本語も英語もしゃべれないしね。」っていうかんじで、私に対していじわるなかんじはなかったですよ。 |
菅野 |
1年間暮らしてて、誰か通訳いなかったの? |
ミヤケ |
うん。 |
菅野 |
どうやって暮らしてたの? |
ミヤケ |
うん。やっぱね、あれです。関西のおばちゃんは、関西弁で通じるじゃないですか。同じなんです。要は、気は心なんですよ。気持ちを込めて言えば通じるんです、日本語で。(笑) |
菅野 |
えぇ!? ほんとに?(笑) |
ミヤケ |
ほんとにそうなんです! |
菅野 |
はぁー。 |
ミヤケ |
でも、ほんとに困ってると誰かしら助けてくれる。通りすがりのおばちゃんとか、英語が喋れるおじちゃんとか、日本語が喋れるお兄さんとかが来て、「どうしたの?」って。そしたらジェスチャーで説明して、助けてもらう。(笑) |
菅野 |
いや、さすが。(笑) じゃあ、家にずっと籠ってたわけじゃないのね。 |
ミヤケ |
基本的には学校と家の往復なんですけど、やっぱり食べ物買いに行ったりとか、クリーニング出したりとか、丈ツメしなきゃいけないとか、いろいろ生活に必要なことってあるじゃないですか。 |
菅野 |
そりゃそうだよね。(笑) |
ミヤケ |
そういうときは、困っても諦めないってことですね。例えば、パン屋さんに行くじゃないですか。喋れないとは言え、学校で勉強してるから、「これ、ください」みたいなことは言えるんです。でも、「温めるの?」とか言われるともうわかんない。「え?」っていうかんじで固まるじゃないですか。 |
菅野 |
うん。(笑) |
ミヤケ |
朝とかだと、お店も忙しいから、「はい次!」みたいなかんじでとばされちゃうんです。ボーっと立ってる私の前を、みんな次々に欲しいもの買って帰って行くんです。でも私、喋れないから仕方ないと思ってずっと待つんです。 |
菅野 |
うんうん。 |
ミヤケ |
ずっと待ってると、向こうも申し訳なかったみたいなかんじで、手が空いたときに、「こうなの?」「ああなの?」とか言ってくれる。 |
菅野 |
なるほど。 |
ミヤケ |
見兼ねた後ろのおじさんが、「この子とばされてかわいそうだけど?」とか言ってくれる。そうすると、「だってこの子フランス語喋んないのよ。」となって、「そうなの?」って英語で通訳してくれて、「あれが欲しいらしいよ。」とか言って教えてくれたりする。だからまぁ、自分的にはそんなに困らないで生活できてたんです。 |
菅野 |
うーん。 |
ミヤケ |
だけど、この話したら、普通の人は恥ずかしくて帰るんだって。(笑) |
菅野 |
そうだよねぇ。(笑) |
ミヤケ |
私みたいに、10分も20分もぼーっと立ってないらしい。(笑) だから、諦めなければ大丈夫。 |
菅野 |
なるほどねぇ。人の輪にもすぐ入って来れるタイプでしょ? |
ミヤケ |
けっこう人見知りするんですけど。 |
菅野 |
そうなの? 江戸意匠のときも火の道具展のときも、そんなかんじはしなかったんだけど。 |
ミヤケ |
ま、見られないですけどね。だけど、あんまり人前出るの好きじゃないですね。 |
菅野 |
そうなんだ。 |
ミヤケ |
だから、基本的にはずーっと家で描いてますし、1ヶ月ずーっと誰にも会わないで製作してるのも、全く苦にならないです。呑みに行きたいとか、人と喋りたいとか、そういう気は全くないです。ただ、人に質問されたり、用事をこなすとかそういうのは、普通にできますよ。(笑) 多少迷子にはなったりしますけど。 |
菅野 |
そう。マイさんって、方向音痴だよね。(笑) フランスでよく道に迷わなかったなと思って。 |
ミヤケ |
いやもう迷いまくってましたよ。(笑) |
菅野 |
やっぱり! |
ミヤケ |
学ちゃんに電話して、「今どこにいるのかわからない!」って。 |
菅野 |
いや、すごいわ。(笑) |