第3話 画廊さんが牧羊犬で、私たちは羊。

ミヤケさんから見たプロダクトデザイナーの方は、どんな印象でしたか?
ミヤケ アーティストとプロダクトデザイナーの差っていうのも、また難しいところなんですけど、まずびっくりしたのは、時間厳守!
菅野 あはは。そうだね。(笑)
ミヤケ ミーティングの時間に、全員が揃ってるんです。
菅野 いや、それは、ねぇ?(笑)
ミヤケ 私、アーティストの中では特Aなんですよ。「ミヤケさんは、待ち合わせの時間15分以内には来る。」「アーティストなのに、すごい早い。」とか言って。
菅野 そうなの?(笑)
ミヤケ 「ミヤケさんは、しっかりしてる。」とか「仕事がぴっちりしてる。」って言われてるんですけど、でもプロダクトにきたら、やっぱりそれは幻想だった!(笑)
菅野 あはは。(笑)
ミヤケ だって、私が行った段階で、誰も迷子にならず、全ての人が着席してる状態なんですよ。いつも、「あれ? ぴったりなのに?」っていうのがすごくあって。
菅野 そうだねぇ。
ミヤケ そういう社会的なコーディングが、しっかりしてますよね。やっぱり、一般常識のある人たちとリンクしてるお仕事なだけに、しっかりしてるというか。企業さんはじめ、ちゃんと普通の常識のある人たちと、ずっとお仕事してるじゃないですか。うまく言えないんですけど。
菅野 あはは。(笑)
ミヤケ 1社会人として、みなさんすごいきちっとしてるんですよ。例えば上下関係とかも、けっこうはっきりしてて。
菅野 うん。(笑)
ミヤケ 上を立てるとか、下が動くとか。言葉遣いにしても、みんながみんな、プレゼンとかきちっとできるし、日本語がおかしい人もいないし。いや、菅野さん笑ってますけど、そういうことが綺麗にできていて、すごい尊敬しているんですよ。
菅野 うんうん。(笑)
ミヤケ あと、江戸意匠のもうひとつの魅力は、参加してるみなさんがいい人というか、「えぇ~!? 理解できない!」っていうことがないじゃないですか。(笑)
菅野 そうだねぇ。
ミヤケ すごくスムーズに、みんながフェアに、自分の仕事を着々とやりつつ、周りにも気を配れるじゃないですか。それは素晴らしいし、なんか私、この人たちは好きって思ってるんです。勝手に。すごく好きだわって。
菅野 そういう意味で言うと、プロダクトデザイナーって、かたまりで動くと威力を発揮するよね。
ミヤケ うんうん。
菅野 江戸意匠みたいな展示会は、グラフィックとか会場構成とか、みんなで協力してやらなきゃいけない部分があるわけ。このへんがプロダクトデザイナーはうまい! 何も言わずに率先してやってくれる。スケジュールも自分で管理して、絶対に納期に間に合わせてくるんだよなぁ。
ミヤケ ほんとに素晴らしいですよね。
菅野 できた奴らだなぁ。
ミヤケ ほんとに。私の知ってる世界だと、画廊さんが牧羊犬で、私たちは羊みたいなかんじなんですよ。牧羊犬に「ワンワンワン!」って言われて、みんなで「わぁっ!」て走ってやってたのが、なんだか牧羊犬だけの群れみたいな。
菅野 牧羊犬!(笑)
ミヤケ リーダー犬がいて、そこに向かってちゃんと序列があって、しかもみんなちゃんと働いてるっていう姿を見て、すごい美しいなと思って。こうあるべきだなと思います。
菅野 それはきっと、マイさんがさっき言った、アーティストとデザイナーの違いなんだよね。
ミヤケ ふむ。
菅野 さっきのライバル意識の話もそうなんだけども、プロダクトデザイナーがつくるものって、対象人数が多いんだよね。
ミヤケ うん。そうなんですよね。
菅野 売れるか売れないかわからない状況の中で、目に見えない人たちの70%〜80%に支持されるようなものをつくるわけです、予測で。
ミヤケ はい。
菅野 だけどアーティストという、例えばマイさんみたいな人達っていうのは、自己表現なんだよね。
ミヤケ うーん。
菅野 対象人数が1,000人、2,000人ではないんだよね。
ミヤケ そうですねぇ。残念ながら。
菅野 たぶんね、そのマスの違いがあるから、プロダクトデザイナーは社会性みたいなものがあるんじゃないかと思うんだよね。やっぱり企業と付き合うことになるから。いや、アーティストが社会性ないとは言わないよ。
ミヤケ うーん。
菅野 やっぱり、自分の世界観の中で表現をしていくアーティストという仕事と、社会との関わりで仕事をしていくデザイナーって、けっこう違いが出るなぁって。
ミヤケ あと、みなさんオシャレです。
菅野 オシャレ?
ミヤケ それも社会性の一環だと思うんですけど、みんながおしゃれなの。それなりに、その人なりに、その人のカラーで。
菅野 そうかもしれないね。
ミヤケ あとやっぱり、うまく言えないんですけど、こう、独立している感じが、みなさんちゃんとしますね。
菅野 特に若いプロダクトデザイナーは優秀だよね。
ミヤケ うん。怖いですよね。大友学ちゃんとか、あの若さでなんであんなに見れてるんだろうみたいな。
菅野 次もしこの企画があったら学ちゃんかなぁと思ってるんだけど。
ミヤケ あと、プロダクトの人たちって、ご夫婦が仲良くて、チームでやってるようなところ多いですよね。2人が会社みたいな。
菅野 多いねぇ。僕は絶対だめ!(笑)
ミヤケ そういう意味で、菅野さんはちょっと特殊ですよね。
菅野 女房とは一緒にできないなぁ。
ミヤケ 私、それもすごく羨ましいです。そういうのいいなぁって思います。
菅野 確かにねぇ、見てるといいなぁって思うこともあるんだけどね、自分ではできないなぁ。
ミヤケ いろんなタイプがあっていいと思うんですけど、どちらかというと菅野さんの方が、江戸意匠の中では少数派ですよね。
菅野 そうですね。
ミヤケ 全員が、夫婦でひとつみたいな。
第1話 プロダクトデザイナーって真面目ですね。
第2話 盲蛇に怖じず。
第3話 画廊さんが牧羊犬で、私たちは羊。
第4話 空中分解するんじゃないかと思った。
第5話 現物で指示するパターン。
第6話 自分が欲しいものをつくってる。
第7話 私、サバティカルで。
第8話 悪くてもドロー。
第9話 センスがない人は、お金があっても意味がない。
第10話 お前だって日本語しゃべれないだろう。
第11話 売れないって言われてるメディアムで勝負してやる。
第12話 みんなそういう要素があるのかもしれない。